ARの開発方法:初心者向けソフトや基礎知識、開発費用まで簡単に解説!
AR(拡張現実)とは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせて視覚的に現実を拡張する技術です。
以前はエンタメ分野での活用が主流でしたが、最近では様々な領域におけるARの活用が進んでいます。それに伴い、自社でAR開発を検討する企業も増加しています。
本記事では、ARの開発方法について、概要や基礎的な知識、初心者向けの開発ソフトなどを詳しく解説します。初めての方でもわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
はじめに:AR技術とその重要性
まずARそのものについてとその重要性について、概要を解説します。
ARとは?技術とその種類
AR(「Augmented Reality」の略)とは、実在する空間や風景にバーチャルの映像などの視覚情報を重ねて表示させ、現実の世界を視覚的に拡張する技術です。一般的に「拡張現実」と訳されます。
たとえば、室内にスマホをかざすと実寸大のソファが現れたり、キャンペーンポスターにスマホをかざすとキャラクターが出現したりして、現実の世界が拡張したような感覚で楽しめる施策にARが活用されています。
ARには「アプリ型」と「アプリレス型(WebAR)」と2種類あります。その他、特徴と実際の体験の流れについて以下で見ていきましょう。
▶関連記事:【事例5選】ARとは?VR/MRとの違いや作り方、活用方法を簡単に解説!
▶関連記事:ウェブAR(WebAR)とは?ARアプリとの違いやメリット、事例、作成方法などを紹介
ARの種類
ARには「アプリ型」と「アプリレス型(WebAR)」があります。
「アプリ型」のARは、デバイスにアプリをダウンロードして体験することができます。データの重いコンテンツでも表示が安定しているのが特徴です。GPSやマーカーの反応など、高精度での拡張表現が可能なので、高度なAR体験を幅広く提供したい場合に最適でしょう。
一方、「アプリレス型(WebAR)」のARは、アプリをインストールしなくても、QRコードやURLがあればWeb上でAR体験ができる技術です。アプリ不要なので気軽に楽しめる点がメリットで、より多くの人に体験してもらいやすい傾向にあります。「アプリ型」のARに比べて、開発のハードルも低いです。
どちらのARにもメリット・デメリットがあるので、目的に応じて最適な方を使い分けることをおすすめします。
特徴
ARの特徴はその「体験性/UX」にあります。ARを活用することで、驚きや興奮、楽しさ、愛情、恐怖、などの感情を引き起こす、臨場感のある体験を演出することができ、顧客満足度の向上が期待できます。
さらに、顧客エンゲージメント向上に加え、ブランドの認知度・ブランド選定率・購入意欲などの改善も見込めるでしょう。このようなメリットから、近年では企業の販促・プロモーション施策にARを取り入れ始める企業が増加しています。
体験の流れ
ARには、マーカーの上にコンテンツを表示するARである「マーカー型AR」とマーカーにかざすことなく体験できる「マーカーレス型AR」があります。それぞれのAR体験の流れについて解説します。
なお、アプリ型の場合はまずアプリを自身の端末にインストールする必要がありますが、アプリレス型(WebAR)の場合はQRコードを読み取るか、URLから直接AR体験ができるサイトにアクセスします。
<「マーカー型AR」体験の流れ>
- QRコードまたはURLから、ARカメラにアクセスします。アプリ型の場合は、アプリを立ち上げるとARカメラが起動します。
- 起動したARカメラで対象のマーカーをスキャンします。
- ARマーカー上にAR動画が表示され、AR体験を楽しめます。
<「マーカーレス型AR」体験の流れ>
- QRコードまたはURLから、ARカメラにアクセスします。アプリ型の場合は、アプリを立ち上げるとARカメラが起動します。
- 起動したARカメラにAR動画が表示され、AR体験を楽しめます。
ARには具体的にどのような効果があるのでしょうか?次章では、その効果と重要性について解説します。
ARの効果と重要性
ARは視覚的注目を集めやすく、強く印象に残りやすいという効果があります。ARの脳への影響を調査したZappar社の研究結果によると、AR以外の体験に比べ、ARコンテンツは1.9倍の視覚的注目を集め、印象・記憶の残りやすさは1.7倍にもなることが明らかになっています。
また、英国のARスタートアップであるPoplar Studio社が発表したARマーケティングガイドでは、AR体験の滞在時間は、AR体験を伴わない動きのある映像情報の4倍にもなり、75秒となることがわかりました。
そのような効果があるARを活用することで訴求力の高いコンテンツを制作できるため、近年その重要性は高まっています。
▶参考記事
How to Revolutionise your Marketing Strategy with AUGMENTED REALITY
How augmented reality affects the brain
開発不要?圧倒的低コストの「ARツール」の登場
一般的に言われる「AR」を作るためには、「平面や空間を認識する技術」と、「平面や空間に表示するコンテンツ」の2つが必要となります。コンテンツは3Dコンテンツを中心に様々な制作環境が既に存在し、ARが注目される前からゲーム領域を中心に活用されていました。一方で平面・空間認識の技術は、ARのコアな技術であり、様々な開発環境を組み合わせることで実装することができます。
しかし、開発会社に依頼する場合、開発費用はかなりの高額となります。どの程度カスタムを行うかにもよりますが、開発で数百万円、運用保守で月額数万~数十万円はかかると考えておいたほうが良いでしょう。
対して、開発不要でコンテンツ登録をすれば簡単にARを作ることができる「ARツール」が2010年代後半より登場してきました。
有名なのはアプリ型ARの「COCOAR(ココアル)」で、累計導入社数は7,500社以上、ARアプリ「COCOAR」の累計DL数は470件以上(2024年6月時点)で、業界を問わず多くの企業で活用されてきました。
またアプリ不要のWebARだと、「LESSAR(レッサー)」や「8th wall」などのプラットフォームが有名です。
これらのツールでは、事業者側でツールの開発を行い、利用企業はツールにコンテンツを登録するだけでARを作成・活用できるようになります。また運用保守費用(サービス利用料)として月額数万円~で利用できるため、圧倒的低コストでARをビジネスに活用できるようになりました。
もし具体的にARツールについて知りたい、検討したい方は、こちらの資料をご覧ください。
WebAR「LESSAR(レッサー)」概要資料をダウンロードする
基礎編:AR開発に必要な知識
AR開発には、開発ツールと表示したいコンテンツの2つが必要です。そこで本章では「開発ツール・言語」及び「コンテンツ制作とユーザー設計」を解説します。
開発ツール・言語
ARを開発するには専用のツールが必要です。また「アプリ型のARを開発するのか」「アプリレス型(WebAR)のARを開発するのか」などによって、選択するツールも異なります。AR開発の目的や、ターゲットとする端末を明確にした上で取り組みましょう。
代表的なAR開発ツールは、「ARKit」「ARCore」「Spark AR」などがあります。詳しくは次章の「初心者向けAR開発ソフト・ツール」をご覧ください。
AR開発に使用される言語で代表的なものには、iOS向けなら「Swift」、Android向けなら「Kotlin」や「Java」などがあります。利用する開発環境によって使用する言語は変わります。
Unityを使用する場合は「C#」、アプリレス型(WebAR)でARを実装する場合は、「HTML+JavaScript」を利用するのが一般的です。よく間違われるのですが、unityはAR開発環境ではなく、3Dなどのコンテンツを開発する環境になるので、別途でAR開発環境を用意する必要があります。
最近は「AR Foundation」という、iOSでもandroidでも機能するunity上のフレームワークが使われることも多いです。
コンテンツ制作とユーザー設計
コンテンツ制作とユーザー設計では、「どのようなARをどのような流れでユーザーに提供するのか」というAR体験の詳細を考えます。そして、設計した内容に沿ってプログラミングを行います。
コンテンツは現実空間を認識する方法によって種類が異なり、以下の4つに分類できます。
- マーカー型(画像認識型):特定の写真やイラスト、文字をマーカーとして登録し、画像認識を行うと、ARが表示される。
- GPS型(位置認識型):端末の現在位置をGPSで取得し、付近に設定されたARコンテンツを表示する。
- 空間認識型(マーカーレス型):端末のカメラが認識した街の風景などの空間情報からユーザーの位置情報などを特定し、ARを表示する。
- 物体認識型(マーカーレス型):端末のカメラが認識した建物などの物体情報からユーザーの位置情報などを特定し、ARを表示する。
ユーザー設計では、ARを体験しようとするユーザーに「何をどのように操作すればいいか」などを迷わせず、わかりやすく誘導できる設計が重要です。主な設計方法と対処法は以下の通りです。
内容 | スキャンするもの | 対処法 | |
---|---|---|---|
イメージトラッキング/オブジェクトトラッキング | ユーザーが対象物をスマホでスキャンすることで、ARが表示される。 |
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インスタントトラッキング | 端末のカメラで平面/空間を検知し、認識した平面/空間に対して、ユーザーがアクション(タップなど)を起こすことで、ARが表示される。 |
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初心者向けAR開発ソフト
初心者向けのAR開発ソフトについて、以下の代表的なソフトを紹介します。
- AR core(Android/iOS用)
- AR kit(iOS用)
- AR.js
- 8th wall
AR core(Android/iOS用)
「ARCore」は、Googleが提供するARフレームワークです。「専門知識がなくても利用できる」「JavascriptやUnityなどの人気の言語や開発環境で利用できる」などの特長があり、利用するハードルが比較的低いため、多くのユーザーに利用されています。
「ARCore」では、平面/空間認識の機能によって物体の表面や立体的な像を検知し、多種多様な3D表現ができるため、幅広い用途に利用できるのが魅力です。基本的な対応デバイスはAndroidですが、一部機能はiOSにも対応しています。
無料で利用できる点もメリットです。「AR Core」を活用して実装できる機能は以下の通りです。
- ARセルフィー
- オブジェクトや水平面/空間の認識
- モーショントラッキング
AR kit(iOS用)
「ARKit」は、Appleが提供するApple製品専用のAR開発プラットフォームです。iOSを対象としており、iPhoneやiPadのカメラで体験できるARコンテンツを無料で制作できます。
iOS向けの言語である「Swift」や、Swift向けの開発環境である「Xcode」が利用できるため、AR開発のためにわざわざ特別な環境を用意する必要がありません。
またiPhoneのPro以上のモデルにはLiDARと呼ばれるセンサー機能が搭載されているため、人の動きを自動感知してキャプチャしたり、オブジェクトの前後をARコンテンツが通り過ぎる演出を施したりすることが可能です。よりリアルで没入感のあるAR体験を実現できます。
詳細はこちら:https://developer.apple.com/jp/augmented-reality/arkit/
AR.js
AR.jsは、アプリレス型(WebAR)のARを開発できる、代表的なオープンソースソフトウェアのひとつです。javascriptのライブラリで、誰でも無料で利用でき、簡単なコードでアプリレス型(WebAR)のARを実装することができます。
マーカーベースのARが簡単に作成できるほか、GPSベースでのオブジェクト表示や、任意の画像をマーカーとすることができる「イメージトラッキング」なども利用可能です。他にも、360度動画再生やアニメーション制作などができるという強みがあります。
WebVRのフレームワークである「A-Frame」を掛け合わせることで、javascriptの組み込みを簡略化でき、HTMLタグベースでWebARを作成することも可能です。少しのHTMLコードを書くだけで、スマホでも簡単にARコンテンツを開発することができます。
詳細はこちら:https://ar-js-org.github.io/AR.js-Docs/
8th wall
米国の8th Wall社が開発した「8th Wall」は、アプリレス型(WebAR)のAR開発をサポートするツールです。
先述した「ARCore」は基本的にAndroid向け、「ARKit」はiOS向けのネイティブアプリであるのに対し、8th Wallはブラウザ上で動作するため、AndroidとiOSの両方に対応できるという特長があります。開発者はAndroid、iOSのアプリの開発が不要で、ユーザー側も専用アプリのダウンロードが不要という点が魅力です。
three.js、A-Frameなどを開発環境としており、画面トラッキング・顔認識・平面認識など、品質の高いARエンジンを提供しているのもポイントです。
トライアル期間が設けられているので、入門的にAR開発に取り組みたい際におすすめです。
詳細はこちら:https://www.8thwall.com/
各種SDK
SDK(「Software Development Kit」の略)とは、ARアプリの開発に必要な機能が備わっているソフトウェアです。代表的なAR開発用SDKを紹介します。
ARFoundation
「ARFoundation」は、先述した「ARCore」と「AR Kit」の差異を気にせずにARを開発できるフレームワークです。開発環境や言語が異なる両者の違いを吸収し、AndroidとiOSのどちらにも対応できるARアプリを制作することができます。
ゲームエンジンと実行環境を兼ね備えた開発ツールである「Unity」のパッケージセットであり、様々な機能やアセットが備わっているため、よりリッチなAR体験を制作できるのが魅力です。また他社から公開されているUnity用SDKの多くは、ARFoundationをベースとしており、連携しやすいというメリットもあります。
ただ、ARCoreやARKitの最新機能は遅れて実装される傾向にあるため、その点は注意が必要です。
詳細はこちら:https://docs.unity3d.com/Packages/com.unity.xr.arfoundation@6.0/manual/index.html
Pretia
「Pretia」とは、プレティア・テクノロジーズ社によって提供されている、AR開発を支援するプラットフォームです。複数人で同時にARを体験できるマルチプレイ機能やVPS機能を搭載しています。
日本の企業であり、ドキュメントが全て日本語で用意されているので利用しやすく、地点のマッピング、登録、開発までがスムーズにできるよう設計されているのが特長です。豊富な機能を活用して、以下のような様々なAR体験を制作できます。
- 商業施設内でのナビゲーション
- 現実の街を舞台にして、複数人のチームで楽しむRPG
- 建物やお店の特徴を活かしたAR謎解きゲーム
詳細はこちら:https://corporate.pretiaar.com/
Kudan AR SDK
「Kudan AR SDK」日本に本社を構えるKudan社が提供するモバイルAR用SDKです。
画像認識に特化しており、大量のマーカーを使った画像認識を行えるほか、SLAMを用いて3Dオブジェクトの実物大表示なども行えます。さらに、GPS機能を活用したロケーションベースARの利用や、3Dメッシュのリアルタイム生成なども可能です。
高性能な機能を搭載しながら、最新のモバイルデバイスを必要とせず、古い端末でも十分利用できるという魅力もあります。
詳細はこちら:https://www.xlsoft.com/jp/products/kudan/ar-sdk.html
AR開発か、ツールの利用か、適切な選択をしよう
本記事では、ARの開発方法について、概要や基礎的な知識、初心者向けの開発ソフトなどを解説しました。
ARを活用することで、顧客エンゲージメントや自社の認知度の向上、さらには業務効率化なども見込めるため、最近ではゲームやイベントなどのエンタメ分野以外にも、医療や製造業、不動産など様々な業界での導入が増えています。
特にアプリのダウンロードを必要とせず、気軽に利用できるアプリレス型(WebAR)の需要は高まっています。
ただ、ARを開発することが適切なのか、あるいはツールを利用するほうが適切なのかについては、社内で検討すべき事柄かと思います。
特に「開発/制作コスト」「運用保守工数」の観点もありますが、一番は「ARを利用したプロモーション」の成果を出せる体制があるかどうかが一番検討すべき事象です。プロモーションの効果を高めるために、開発したほうが良いのか、ツールを導入したほうが良いのかはよく考えるほうが良いでしょう。
クラウドサーカス社では、ARプロモーションツール「COCOAR(ココアル)」「LESSAR(レッサー)」をご提供しています。
これまでに15,000社以上に活用いただき、事例は1000件を超えています。企画~制作~分析まで一気通貫で支援可能なため、ざっくり「ARでこんなことできるのかな」と思ったら、まずはご相談ください。
WebARの活用法がわかる『LESSAR(レッサー)』概要資料
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