コミュニケーションデザインとは「伝わる」をつくること。その意味や具体事例、ビジネスでの重要性を解説!
コミュニケーションデザインとは、「誰に・何を・何のために」伝えるか(コミュニケーション)を設計(デザイン)することを指します。 一方的に情報を発信するものではなく、顧客の心を動かすように「デザイン」することです。
もう少し分かりやすくいうと、コミュニケーションデザインとは「相手が自然な形で意図を感じ取って行動できるよう、”伝わる”をつくること」です。「⚪︎⚪︎してもらう、⚪︎⚪︎させる」を「⚪︎⚪︎してくれる」ように変えることだといえます。
また、コミュニケーションデザインの設計におけるポイントは、「目的」を軸とした「誰に(ターゲット選定)」「どのように(顧客体験・UX)」を徹底的に考えることです。
本コラムでは、コミュニケーションデザインの意味や解釈、具体的な実践事例、重要視される理由とポイントについて紹介します。
目次
コミュニケーションデザインとは?
まずはコミュニケーションデザインの意味について確認していきましょう。
言葉の意味から読み解いてみた
「コミュニケーションデザインとは」について、ビジネス的な観点からは以下のように捉えることができます。
・コミュニケーション=特定の目的をもって、特定のタイミングで誰かに、何かを伝える行為・表現
・デザイン=アート・絵画としての意味ではなく「設計」をすること
この場合の“特定の目的”とは、「人を動かす≒購買行動、移動、選択決定」といった「行動変容」を意味することが多いです。つまり、コミュニケーションデザインとは、人を動かすために「誰に・何を・いつ・どのように伝えるか」を設計することです。
近年、この考え方を販促プロモーションやイベント、PR・広報に取り入れる企業が増えています。
要約すると「わかりやすくすること」
もう少し踏み込んで理解するために、ある施設での「SDGsにからめた謎解きイベント」を例にして考えてみましょう。
デザインされていない「普通のコミュニケーション」と、デザインされた「良いコミュニケーション」を比較すると以下のようになります。
【デザインされていない普通のコミュニケーション】
・白い紙を渡されて、そこに書かれている内容から謎解きをはじめる
・資料を見て謎解きのヒントを得る
・10か所あるポイントをすべてまわり、その中から3つの「本物のヒント」を探す必要がある(少し大変)
・すべての謎を解いた後に、解説とSDGsの啓発動画が流れる
【デザインされた良いコミュニケーション】
・謎解きイベントの世界観やターゲット層に合わせたデザインの媒体(紙のパンフレット、スマホアプリなど)から物語がスタートする
・チャットボットで謎解きの主人公やキャラクターと会話しながら、ヒントを探しに行く(参加型・ストーリーテラーによる没入体験)
・謎を1つ解くことで、10か所あるポイントのうち3つの「本物のヒント」が、どこにあるのかわかる体験設計にする(離脱と満足度低下を防止)
・物語自体がSDGsにからめた謎になっていたり、SDGsのクイズに正解することで謎を解くヒントが得られたり、イベント内の仕掛けで自然とSDGsのことを理解できる
この例から言い換えると、コミュニケーションデザインとは「相手が自然な形で意図を感じ取って行動できるよう、わかりやすく変換すること」です。「⚪︎⚪︎してもらう、⚪︎⚪︎させる」を「⚪︎⚪︎してくれる」「OOしたくなる」ように変えることだといえます。
また、手法や媒体は様々で、紙媒体・画像/動画/3D・SNS/メディア・オフライン施設・AR/VRなど、場面や届けたいユーザーに合わせて選択することが重要です。
コミュニケーションデザインされた施策は、ユーザーへの意図の理解を自然に促し、「またやりたい」と思えるプロモーションに近づきます。意識することで企業の狙い通りの効果を上げやすくなるでしょう。
コミュニケーションデザインがビジネスで重要な理由
ここからは、コミュニケーションデザインが重要視されている理由を3つ解説します。
情報伝達手段の多様化とSNS疲れの顕在化
数年前から、メディアやニーズの多様化、SNSの普及などで、より細やかな伝え方をしなければ情報が届かなくなっています。そのため企業では、デジタルマーケティングによるユーザー属性の収集・セグメントや、リターゲティング広告などを実施するようになりました。
戦略的なWeb広告によって、顧客に適切な情報が届くと思われていましたが、現代では「広告疲れ」「SNS疲れ」という問題が顕在化しています。
株式会社オリゾによる調査では、SNS世代の6割以上が「デジタル広告になんとなく疲れた」と回答しています。
広告疲れは、企業やサービスのブランディングにも悪影響を及ぼしています。調査によると、7割以上が「デジタル広告を出稿する企業・ブランドの好感度が下がったことがある」と感じています。
「SNS世代の広告嫌いに関する実態調査(2023年2月)」・「SNS世代が苦手な広告に関する意識調査(2023年7月)」
このような背景からも、 ユーザー心理を考えて、スムーズに受け取ってもらえるような体験が求められています。「あ、いいな」と思える瞬間を作り、ターゲットのニーズに合った顧客体験(UX)を、最適な環境で届けることがユーザーファーストです。適切なコミュニケーションは、企業・サービスとの関係性を深め、顧客エンゲージメントや売上、ブランドイメージの向上につながるでしょう。
見えない価値の見える化
企業では、パーパス(存在意義・社会的意義)や、CSV・SDGs対応の重要性が高まっています。しかし、その取り組みをユーザーにうまく伝えられず、課題となっている企業が多いです。
その見える化に取り組んでいるのが、パナソニックグループが運営する「Panasonic GREEN IMPACT PARK」です。環境問題への取り組みを見える化し、子どもたちが地球温暖化の問題と解決策を学ぶきっかけづくりを行っています。
「Panasonic GREEN IMPACT PARK」は、東京有明の「パナソニックセンター東京」の1階にあり、グループが掲げる長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を伝える手段として運営されています。施設では、「CO2の削減」と「資源の循環」の2テーマで環境問題について解説。体験型のコンテンツを配置して、楽しく主体的に学べるようなコミュニケーションデザインを実践しています。
参考:Panasonic GREEN IMPACT PARK
このように「伝えたい人」に「伝えたいこと」を届けるためにも、文字・グラフィック、デジタル施策など、さまざまな手段からコンテンツを設計するコミュニケーションデザインが注目されています。
“最新技術”だから成功するという思い込み
例えば「ARやVR、メタバースなど最先端の技術を使えば若い層を取り込める」と思われがちですが、最新技術を導入しても必ず成功するとは限りません。導入したものの、期待を超える成果が得られなかったと感じるケースは多いです。
大切なのは、課題解決のために最新技術をどう活用すべきか、しっかりとプロモーション設計することです。このように、最新技術の活用にもコミュニケーションデザインを設計することが求められています。
【解説】コミュニケーションデザイン実践事例
ここからは、コミュニケーションデザインの実践事例として、ピップ株式会社の子ども用歯ブラシ「はみがき先生」のWebAR施策についてご紹介します。
ピップ株式会社:「正しい歯のみがき方」をつたえるWebAR施策
ピップ株式会社では、乳幼児用歯ブラシシリーズ「はみがき先生」を含む生活用品を販売しています。「はみがき先生」にて、WebARの動画フォトフレームを活用し、楽しみながら「正しい歯みがきの仕方」を学べる施策を展開しています。
目的・背景
「正しい歯のみがき方」があることをご存じでしょうか?
「20分割法」という正しい磨き方があるのですが、知られていない上に、子を持つ親の悩みとして『そもそも歯みがきって「どの順番で、どこから、どれくらいの時間」みがけばいいの?』という点がありました。
実際、ピップ株式会社の調査によると子どもの歯みがきについて、約85%の親が「正しく歯みがきできているか」と不安に感じているとのことです。その課題に対し、「正しい歯のみがき方(20分割法)」をいかにわかりやすく伝えるか、が解決の糸口でした。
「はみがき先生」では「正しい歯みがきの仕方を身につける」をブランドメッセージに掲げ、以下の3つの課題を解決するためのコミュニケーション戦略を検討しました。
・嫌がる子どもの歯みがきの習慣化
・正しい歯みがきの実践方法
・後発で市場への参入
加えて、
・歯を大切にする習慣を作るために、どうしたら親子で「正しい歯のみがき方」実践・継続してくれるか
・既に市場が成熟しつつある乳幼児向け歯ブラシにおいて、後発でも勝てるようどのように「差別化」するか
という点を中心に検討を進めていきました。
施策内容
WebARツール「LESSAR」を導入し、まずは「歯を大切にする習慣を作ること」に重点を置いてAR施策を展開しました。はみがき先生の特設ページにアクセスすると、「正しいみがき方」をもとにしたAR体験ができるようになっています。
AR動画でバイキンたちが登場し、歯ブラシで磨きながら退治をしていきます。バイキンたちの登場の流れは、「正しい歯のみがき方(20分割法)」に合わせて設計されており、ゲーム感覚で歯をみがきながら自然と理解し、楽しみながら習慣化できるような施策です。最後のボスを倒すと、フォトフレームが現れて写真撮影もできます。
成果
ゲーム感覚で歯みがきができるため、4分間ほどの長い動画にもかかわらず、8割近くの子どもが最後まで到達、うち記念写真の撮影率は9割以上でした。ARだからこそ、子どもにわかりやすく伝えられ、競合品との差別化にもつながったと感じてるそうです。
さらにユーザー調査をした結果、「再購入意欲」が他のブランドよりも10%ほど高く、ブランドや商品にファンがついていることも証明されました。Web広告では「ARで楽しく学べる」というキャッチコピーが出たところで、クリック率が向上していることもわかり、ARに対する関心度の高さが出ています。
【関連記事】AR動画をきっかけに、親子で「正しい歯みがきを身につける」ミッションを実現。後発だからこその差別化で、ブランドのファンを育む施策に!
コミュニケーションデザインの肝は”ターゲット”と”UX”
コミュニケーションデザインを考えるにあたって、軸になるのは「目的」です。その目的が決まったら、次に重要なことは「誰に(ターゲット選定)」「どのように(顧客体験・UX)」の部分になります。
「誰に(ターゲット選定)」の部分は年齢、性別、居住地など一般的な属性のほか、「商品を定期購入するファン層」「商品を知っているけれどあまり購入しない層」といった購買頻度・ファン度など、さまざまな角度からセグメントが可能です。
ファン度の分析については「9セグマップ」が有名です。
よく購入する「ロイヤル顧客」、ときどき購入する「一般顧客」、以前購入したことのある「離反顧客」、商品を知っているだけの「認知・未購入顧客」、商品を知らない「未認知顧客」に分類して、さらにそこから積極的か、消極的かをセグメントします。
ファン度の高いロイヤル顧客でも、継続的に購入するわけではなく「次は別のブランドを購入する」と考えている人は多いです。
加えて、商品・ブランドの世間における浸透度に応じて、ライト層を増やすべきか、ロイヤル顧客の熱感をより上げていくべきか、など対策が変わってきます。
そのため「9セグマップ」における「どの層をどの層に引き上げることがインパクトが大きいのか?」を分析していくことで、コミュニケーションデザインの戦略の骨子ができてきます。
▼9セグマップ
画像引用元:MarkeZine
次に、「どのように」の部分ではUX(ユーザーエクスペリエンス)を意識することが重要です。UXとはユーザー体験のことで、「問い合わせをしたら対応が丁寧だった」「製品が探しやすかった」など、製品・サービスを利用したときにユーザーが得られる体験を意味します。
UXを向上させるには、下記の4つのポイントが大切です。
・双方向性UX…ユーザーのアクションを通してコンテンツが反応・変化する、双方向性のあるUXのこと。
・直感理解UX…専門的内容や難しい内容を直感的に理解できるような仕組みにすること。
・ストーリー軸の没入UX…ストーリーに没入できるような仕組み作りをすること。
・インスタントウィンのお得感UX…すぐに得られる小さな喜び・価値(インスタントウィン)やお得感のある設計を行うこと。
ユーザーにとってのメリットがデメリットを上回り、「ついやってしまう・やりたくなる」導線を設定してこそ、「伝えたいことが伝わる」コミュニケーションになります。
【関連記事】 ユーザーエクスペリエンス(UX)とは?UI/CXとの違い・UX向上策を事例で理解しよう
デザインされたコミュニケーションだからこそ「目的が達成される」
施策の実施者・企画者側が考える際に大切なのは「そのイベント・キャンペーンに最後まで参加したいと思うか」をシビアに見つめ、考えることです。
繰り返しになりますが、自分で考えた施策内容は、基本的に机上の空論であり、「こうしてくれるだろう」「こうなったらいいな」という理想が多分に含まれています。だからこそ、自分だったらストレスなく、自然とその行動を起こすかどうか、という視点で振り返りながら施策を検討していくことが必要です。
クラウドサーカスでは、このような「コミュニケーションデザイン」のコンサルタントが、BtoC企業の販促企画やイベントの戦略、戦術、実行、運用支援まで実施しています。 とくに「AR(拡張現実)」や「チャットボット」を活用した、没入型体験や参加型体験による「ブランド認知率・再想起率向上」「満足度・イベント再参加意欲向上」につながる施策を得意としています。
上場している大手企業様の支援実績も多数ございますので、「どのように施策を展開したらよいのかわからない」など課題をお持ちでしたら、ぜひ1度お問い合わせください。
WebARの活用法がわかる『LESSAR(レッサー)』概要資料
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