事業部長が解説Vol2|ARは魔法の杖じゃない。理想の体験からAR活用法を考えよう

Vol1では、ややロジカルに「ARって何に使えるの?」を解説しました。今回は、もう少しライトな感じで「ARって何が強み/弱みなの?」を紹介します。

Vol1「ARって何につかるの?」はこちら

理想の体験からAR活用法を考えよう

ARを活用する際には、「ARで何ができる?」「ARで何をやろう?」ということから考えるのではなく、一旦全ての制約を取り払って「理想の体験とは?」をシンプルに考えることが大切です。そうすることで、ARが手段として適切かどうかを判断しやすくなります。

まずは企画・課題において「理想の体験は何か」を考えます。たとえば「買う前に実際見てみたい」「いろんなメイクを試してみたい」「誰かこっち!て指さして案内してほしい」「どこを動かせばよいか書いてほしい」「大好きなキャラクターと一緒に旅がしたい」など、具体的な理想案を出します。

その後は出した案について「現実世界で完結できるのか」「デジタルコンテンツで現実を補強することで、もっと簡単にできるのか」を考えます。現実世界+デジタルコンテンツで実現できるのであれば、ARが手段として適切な可能性が高いはずです。

そこからさらに、「ARでどのように解決できるか」「どんな活用方法があるか」などを考えます。先述した「ARでできること」などの活用方法を適用させてみると良いでしょう。

さらにARを深く理解するために、ARの強みと弱みについて解説します。

ARの強み

ARの強みとして、3つの副次的な効果について紹介します。

①物や場所にストーリーを与えられる

ARには、物や場所にストーリーを与えられるという強みがあります。

物や場所に対する印象や感情は背景にあるストーリー・エピソードで大きく変わることがわかっており、スタンフォード大学の研究によると、論理的な事実に比べて物語の方が22倍も記憶に残りやすいことが分かっています。

ARを通してストーリーを物・場所に紐づけて体験することで、その効果をより高めることが可能です。

たとえば「ここがアニメ・マンガの舞台になったんだよね!」というストーリーから生まれた観光形態が「アニメツーリズム・聖地巡礼」です。
ここに「まるでアニメ・マンガのキャラクターが目の前に、かつアニメと同じような形でいるように見える」ようなAR企画をデザインすることで、インパクトや驚き、愛着を持つことにつながるでしょう。
ゆるキャン△AR
参考:Harnessiong the Power of Stories|Women's Leadership
参考:大人気マンガ『ゆるキャン△』と自治体がコラボしたイベントにクラウドサーカスのCOCOARが採用


②共有を生みやすい(ただし良質なAR体験に限る)

AR体験は驚きを生みやすいため、共有したくなるコンテンツを作りやすいという強みがあります。

写真や動画を撮影する機会は増えましたが、それらを撮ったら必ずしも共有するというわけではありません。

参考までに、過去に「人々がなぜSNSで共有するのか、そしてそれはどういったことを意味するのか」というテーマで調査された研究によると、ユーザーがSNSで共有する際に、典型的な5つの動機があると結論付けています。

その動機とは、

  1. 自分が良いと感じ、人が喜ぶであろうと感じるため
  2. 自分の存在価値を確かめるため(自分のシェアがさらに拡散されたら嬉しい)
  3. 好きなヒト・モノ・コトを応援するため
  4. 他者との関係を育む・維持継続させるため(昔の友人と繋がっていようとする)
  5. 自分の意見・姿勢・ポジションを明確にするため(自分のことを理解してもらいたい)

この5つです。AR体験により、特に1や3が刺激され、「面白い!」「やっぱりOO選手だよね!今日もがんばれ!」といったようなシェアがSNSを中心に起こりやすいです。

有名な事例として、まずは「スラムダンクAR」があげられます。2022年12月の映画「THE FIRST SLUM DANK」にて、入場者特典で配布されたビジュアルカードにスマホをかざすと、キャラクターたちが動き出すARです。このARは当時かなり話題になり、弊社へのお問い合わせの半数以上で「スラムダンクARみたいなARをやりたい」と頂いていました。(弊社の事例ではありません)

2つ目に、夕暮れ限定ARです。TBSドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」のプロモーションとして、弊社のWebAR(アプリレスAR)「LESSAR(レッサー)」を活用いただきました。
夕暮れ時の雰囲気を、ドラマに掛け合わせて体感してもらうため、16時~18時限定で体験できるように設定、また毎日コンテンツ(キャストのボイスメッセージ)を変えることでリピートしてもらいながら、SNS上を「#夕暮れ限定AR」で盛り上げていく企画でした。
総体験回数は10万回以上、X(旧Twitter)での投稿数は1500件以上、またトレンド入りを2回達成しており、「夕暮れ時に癒される」「また声を聴きたい」といったコンテンツに対しての反応だけでなく、「みんなの夕暮れはどんな色なのかな」といったユーザー間の交流も発生していました。
さらにこのプロモーションは、釜山国際マーケティング広告祭にてブロンズ賞を受賞するなど、海外でも認められています。

このように、驚きを生みやすく、バズにも繋がりやすいARは、共有するコンテンツを作りやすいという特徴があるため、思わぬプロモーション効果などが期待できます。
ただし、共有を生みやすいARは良質な体験に限られるということを覚えておきましょう。

参考:Why do people share online(The New York Times Customer Insight Group)

③データが取れる

ARを利用する際にはデバイスを活用するため、データが取れるという点もARの大きな強みです。

たとえばAR地図では多くの人が”どこで迷っているのか”という情報を取得でき、ARスタンプラリーでは”回る順序の性差・年代差を可視化”することができます。この強みは、現実世界で完結したときには難しいポイントです。

実際にも、あるメイク会社がARメイクを展開する会社を買収した際、AR技術の買収という目的以外に、どういう世代、どういう顔の人、どういうメイクを試しているのかというデータを得るという目的がありました。データの取得は自社の展開にも大きく寄与するはずです。
AR×Googleマップ
参考:GoogleマップのAR機能が便利!

ARの弱み

ARの弱みについてもしっかりと把握しておきましょう。

①体験コストが高い

ARの弱みとして、体験コストが高いという点が挙げられます。体験コストが高いとは、何か特別な工程を踏む必要があるような、いわば「面倒である」とも言えます。

例えば、何か購入したいものがあったとしても、わざわざ店舗までいかなければいけないと感じる状態は「購買体験のコストが高い」とも言えます。
それに対する解決策として、2つの視点があります。

  1. 体験コストを下げる
  2. 体験コスト以上のメリットを提供する

購買してもらうために「体験コストを下げる」場合は、オンラインショップを案内して「家でも購入できる状態」を作ることなどがあげられます。
「体験コスト以上のメリットを提供する」場合は、商品のターゲット層に刺さる広告を打つ(複数個の購入でプレゼントが当たるキャンペーン、人気アイドルが訪れるイベントなど)や、そもそも購買体験といったことがあげられます。

このように、オンラインショップのような形で普段の行動の中に入り込めるように体験コストを下げるか、わざわざ体験したいと思えるコンテンツにするか、を考える必要があります。

「ARを体験する」ことにおいても同様で、普段の行動の中には存在しないため、わざわざやってもらう必要があり、体験コストが高いといえます。しかし弱みを理解するためのいくつかのポイントがあります。

たとえば体験コストが高いという点を、プラットフォーム・ツールの比較ではなく、その後に「得られる体験」との比較で考えるとどうでしょうか。
ARならではのリッチコンテンツが提供できれば、「体験してよかった」と思ってもらえる可能性があります。
だからこそ「面倒くささ以上にわざわざやりたくなる、理想の体験」を実現することが重要です。

また活用法によってはAR×企画(×広告)で新規集客も狙えます。ここでポイントとなるのは、ARを活用する際はターゲットを絞る必要があるということです。
クーポンのように広範囲にターゲットを指定して多くの人にリーチすることを想定するのではなく、ターゲットを定め、ファンが多いコンテンツと掛け合わせた施策を打つことで効果が期待できます。

ターゲットを決めてAR×企画を打ち、さらに理想としてはAR×広告を行うことで新規顧客の獲得も十分に見込めるでしょう。

②事例やナレッジにアクセスしづらい

ARには「事例や活用ナレッジにアクセスしづらい」という弱みもあります。

ARコンテンツを制作する際には3Dモデルなどの「制作」が必要であるほか、観光やエンタメ業界における”実証実験レベル”での活用が多く、ビジネス活用の成功例が少ないです。
そのため、まだまだ事例やナレッジが世に出ておらず、アクセスしづらいのが現状です。

クラウドサーカス社では、約10年ほどAR事業を展開しており、1000件ほどの事例を所有していますが、他の企業や他の手段(動画マーケティングやキャンペーン施策など)と比べると、
まだまだ少ないと思います。

ARは魔法の杖じゃない。継続して使う漢方薬のようなもの

ARについて解説してきましたが、大事なのは「ARは魔法の杖ではなく、継続して使う漢方薬のようなもの」だと理解することです。

ARを活用することで、「面白いことができるためにすぐに結果が出て、何もしなくても多くの顧客が集まる」と考えられてしまうことがありますが、ARでなくても、導入しただけで即効性・爆発力を得られる施策はありません。

ARの特性・強みである「記憶に残りやすい・物事にストーリーを付与できる・ターゲットをしっかり絞れば理想の体験を実現する手段になる」などを上手に活かすことが重要です。

定めたターゲットに記憶に残りやすい良質なAR体験を提供し、「継続的な利用」を通して接点をもつことで、
商品やブランドなどに対する愛着や好意度を高めてもらうような、漢方薬のような使い方ができることがARの最適な利用法
です。

理想の体験を見極めて適切であれば利用し、継続的にAR体験を提供することで、徐々に且つ着実にファンの育成や良好な関係性構築ができていきます。

理想の体験を考える上で重要になるのが「コミュニケーションデザイン」です。次回Vol3で詳しく解説します。
 

 >続きはこちら「ARを効果的に活用するための”コミュニケーションデザイン”とは?」




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