AR広告・ARプロモーションとは?企業での面白い活用事例や作り方を紹介
広告手法は多様化し、現在では様々な媒体が利用されていますが、その中でも特に注目を集めているのがAR(拡張現実)を活用した「AR広告・ARプロモーション」です。
ARは認知目的の看板やポップアップの掲載情報をデジタルで拡張した「見せるもの」としても効果的ですが、キャンペーンやプロモーションなどの販促、ファン化を目的とした態度変容、行動変容を促す施策としてより効果を発揮します。
本記事ではAR広告・ARプロモーションのメリットをはじめ、SNSを活用したAR広告やその仕組み、面白い活用事例まで網羅的に解説します。ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
ARフォトフレーム施策の様々な業界の活用事例をまとめました。
キャラクター活用・販売促進・地域活性化・オンラインイベント・学校・自治体での事例を、企画概要・成果まで紹介。
AR広告とは
AR広告とは、現実を仮想的に拡張する技術である「AR「拡張現実」」を活用した広告手法です。
ARはスマートフォンやタブレットなどのカメラを通して、現実世界に3Dデータを表示することができるため、現実と仮想世界を融合させたリアルで臨場感のある世界観を演出できます。
ARを広告に活用することで、衣服の試着や家具の試し置きなどのバーチャル体験を提供でき、商品の認知度や購買意欲の向上が見込めます。専用のアプリ不要で利用できる「ウェブAR」を採用すれば、気軽にリッチな体験を楽しんでもらえるため、顧客満足度向上の効果も期待できるでしょう。
また近年、Facebook社が社名を「メタ」に変更するなど、ARなどの先端技術を活用した仮想空間を意味する「メタバース」が注目を集めたことにより、さらにARの認知は広がりました。
現在ではコスメ業界や家具家電分野に加え、食品業界や生活用品業界、メディア/放送業界などの幅広い分野における導入が増加しており、今後さらにこの流れが発展していくとされています。
ARと混同されやすいものに「VR」があります。AR広告をより正確に理解するために、両者の違いを明らかにしておきましょう。
参考:【事例5選】ARとは?VR/MRとの違いや作り方、活用方法を簡単に解説!
ウェブAR(WebAR)とは?ARアプリとの違いやメリット、事例、作成方法などを紹介
VRとARの違い
「VR(Vertial Realityの略)」は、仮想空間をまるで現実のように体感できる技術を指し、日本語では「仮想現実」などと呼ばれます。現実の世界にデジタル情報を重ね合わせるARとは大きく異なるため注意しましょう。
VR ではVRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)という専用デバイスを装着して体験するのが特徴です。体験者はCGで制作された仮想空間の中で、非現実な世界を本物のように感じながら体験することができます。
VR広告はこの技術を活用した広告手法であり、体験するためには専用のデバイスを必要とする点がAR広告との大きな違いです。そのため、スマホやタブレットで利用できるAR広告よりも、VR広告では配信できるユーザーが限られます。
また、自身のアバターが行動するインターネット上の仮想空間である「メタバース」とも混同されやすい傾向にありますが、ARやVRはあくまでもメタバース空間に入るための「ツール」と捉えられています。ARやVRと共に語られる頻出語でもあるため、ここでしっかりと理解しておきましょう。
AR広告のメリット
AR広告には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主な4つのメリットを紹介します。
ダイナミックな表現が可能
現実世界とデジタル情報を融合できるARでは、文字や画像、動画などのデジタル情報に加え、3DCGを表示することも可能です。そのため、よりダイナミックで迫力のある表現ができるというメリットがあります。
リアルさや臨場感のある演出に加え、視覚的な面白さを表現することができるため、ユーザーの関心をより強く惹きつけることができます。話題性の創出にもつながるためSNSでシェアされやすい傾向にあり、拡散によるプロモーション効果も期待できるでしょう。
また従来の紙や動画の広告とは異なり、インタラクティブな演出が行えるという点も魅力です。より楽しめる体験を通して、ユーザーに自社商品やサービスをしっかりと認知してもらうことができます。
WEBとの親和性が高い
ARはWEBとの親和性が非常に高いというメリットがあります。
たとえば、ECサイトにてARを活用したバーチャル試着体験を提供し、体験した商品を購入したい場合はそのまま購入ページへと遷移できるようにすることで、購買促進が実現できます。また自社サイトやSNSから期間限定のARキャンペーン特設サイトに誘導すれば、高い集客効果を見込めます。
ブラウザ上で手軽に利用できる「ウェブAR」を使えば、アプリをダウンロードする手間が省けます。AR体験までのハードルを下げることで、ユーザーに利用してもらいやすくなり、キャンペーン参加率も向上するでしょう。
購買意欲の向上
購買意欲を向上できるという点も、AR広告の大きなメリットです。
代表的なものに、「サイト内の商品を実寸大で試してもらうことで、購買率を高める」という施策があります。自宅での家具試し置きや、洋服のバーチャル試着、コスメのトライオンなど、様々な施策がAmazonなど大手のECサイトで導入されています。
導入前後で費用対効果が計測しやすく、成功事例が多い傾向にあることから、ARを活用したバーチャルトライは現在非常に注目が高まっています。リアルな商品を試すことで、「思っていたのと違った」というギャップをなくすことができるため、返品率の削減にも有効です。
ブランドへの愛着を生み出す
AR広告を通してブランドの世界観を体験してもらうことで、ブランドへの愛着を生み出せるというメリットがあります。
ARではユーザーの動きや反応に応じて、現実世界に出現した仮想のキャラクターがリアクションしてくれるというリッチな演出を施せます。インタラクティブ性を活かすことで、ブランドの世界観をより深く、印象に残る形で体験してもらうことができます。
また、ブランドが伝えたいメッセージや歴史などをユニークに伝えられるので、ロイヤリティ向上やファンの育成などファンマーケティングにも大きく貢献するでしょう。ブランドの世界観を楽しんでもらえる、エンターテインメント要素の強いAR体験を店舗にて提供すれば、滞在時間の伸長や店内の回遊性アップ、売上向上なども期待できます。
SNSを活用したAR広告
近年ではSNSを活用したAR広告も急増しています。本章では多くの企業で活用されている、InstagramとFacebookにおけるAR広告の活用方法について解説します。
Instagram・FacebookでのAR広告の活用方法
旧Facebook社(現Meta)は、2017年にAR機能「Spark AR」の提供を開始し、Instagramでも2022年からオープンベータ版がリリースされました。
「Spark AR」は、無料公開されている「Spark AR Studio」を通して、誰でも簡単にバーチャルメイクや背景合成などのオリジナルARエフェクトを作成することができるサービスです。作成したARをMeta Spark Hubに広告エフェクトとして公開し、エフェクトが承認されればAR広告としてInstagramやFacebook上で利用できるようになります。
Instagramでは、投稿が24時間で消えるストーリーズやフィードにて配信可能です。特に多くのユーザーに利用されているストーリーズでは、体験できる楽しみを提供することで、ユーザーと新しい形で接点を持つことができます。
両SNSでのAR広告は、ECサイト分野をはじめ、美容業界やイベント業界、ゲーム業界など、幅広い分野で効果を発揮します。認知度向上やリーチ、トラフィックなどを目的として配信することが可能です。
Instagram・FacebookでのAR広告の効果測定指標
Instagram・FacebookでのAR広告の効果測定は、以下のインスタントエクスペリエンス(モバイルデバイスにてタップするとフルスクリーン表示される広告フォーマット)の指標からチェックできます。
・インスタントエクスペリエンスの閲覧時間:ユーザーがAR広告をタップしてから、ARエフェクトを閲覧していた平均の合計時間(秒)。
・インスタントエクスペリエンスを開いたクリック数:ユーザーがARエフェクトを利用するために、広告上をタップした回数。
・インスタントエクスペリエンスのアウトバウンドクリック数:ユーザーがARエフェクト内でCTAボタンをタップした回数。
(参照: Meta ビジネスヘルプセンター AR広告の指標について)
AR広告の面白い活用事例
本章ではユニークなAR広告の活用事例を紹介します。
食品業界での成功事例(うまい棒)
老舗駄菓子屋メーカー株式会社やおきんは、ARを活用した施策「第1回うまい棒総選挙」を2022年10月〜11月まで、約1ヶ月半に渡り実施しました。
本施策は全15種類のフレーバーから1位のうまい棒をWEB投票で決める企画です。ユーザーは投票後に調査員の「出口調査(アンケート)」に答えることで、オリジナルARフォトフレーム(全15種類)をゲットできます。
「#うまい棒総選挙」のタグをつけてTwitterに投稿するよう促すことで、スタート時は約400件の投稿、11月11日本丸のうまい棒の日には352件の投稿が創出できました。話題が創出できたことで、実施期間の約1ヶ月半内にうまい棒総選挙のLPには16,000件ものセッションがありました。
さらに本企画で特筆すべきは、一般的なARフォトフレームの平均撮影率が60%前後であるのに対し、撮影率が驚異の93.9%になったことです。「使うだけ」でなく「成果を出す視点」を重視し、「誰に、何を、何の為に?」を意識した計画立案を行うことで、AR広告を効果的に活用することができる一例と言えるでしょう。
参照:Marketing CIRCUS DAYイベントレポート「あなたの推しは?メディアで話題の"うまい棒総選挙"の舞台裏」
生活用品業界での成功事例(歯みがき)
医療衛生用品、健康食品、ベビー用品などの卸販売および、「ピップエレキバン」「ピップマグネループ」「スリムウォーク」などの自社開発商品の製造・販売を行うピップ会社。
新商品「はみがき先生」のブランド開発において、他社との差別化に加え、「幼少期から正しい歯みがきのしかたを身につける」というブランドの意義を正しく伝えることを目的としてARを用いた動画を導入しました。
AR動画は、最後まで見ると「虫歯菌を退治して宝石をゲットするゲーム」を楽しめる仕組みになっており、歯みがきを嫌がる子供でも、楽しみながら正しい磨き方を体験・継続することができます。4分という長い動画にも関わらず、ユーザーの8割が最後まで体験しているという結果が得られ、エンゲージメントの高さが感じられました。
他ブランドと比較し「再購入意欲」が10%ほど高い数値になるという成果も得られ、他社との差別化やファンの獲得も実現しています。
詳しくはこちら:AR動画をきっかけに、親子で「正しい歯みがきを身につける」ミッションを実現。後発だからこその差別化で、ブランドのファンを育む施策に!
メディア/放送業界での成功事例(テレビドラマ)
戦略的な広告・マーケティングサービスを提供する株式会社I&S BBDOが実施した、TBSドラマ「夕暮れに手をつなぐ」の放送前プロモーション「夕暮れ限定AR」企画も、大きな成果が得られた事例の一つです。
本企画は、夕暮れ時の空にスマホをかざすと、主演キャストからボイスメッセージ入りAR動画が届くというものです。ドラマの世界観をリアルに体験してもらうことで、放送前からドラマを盛り上げるべく実施されました。
本企画の特徴は、「夕暮れ」という時間帯の「かけがえのなさ」を味わってもらうために、企画設計を第一話の放送前1週間(1月11日(水)〜17日(火))の16時-18時に体験できる日時を限定したことです。
Twitter(現「X」)にてハッシュタグ「#夕暮れ限定AR」付きでの投稿を促すことで、認知拡大、及びユーザー同士の交流を実現し、1週間で9.6万回もの再生を達成しました。さらに、1人あたり3回以上のリピート体験、SNS投稿は1000件以上という成果も得られ、放送前からファンを得ることに成功しました。
当初放送前1週間限定のプロモーションでしたが、大好評につき、放送期間の毎週火曜日16時〜19時にも実施されることになり、SNSでも喜びの声が上がるなど、大きな反響がありました。
さらに特筆すべきは、全世界から応募された広告作品を対象とする国際的なアワードである、釜山国際マーケティング広告祭「MAD STARS 2023」のDesign部門、Communication Design - Digital Designカテゴリーにおいて、本企画が「ブロンズ賞」を受賞したことです。63か国から2万点以上の作品が集められた中での受賞となり、幅広い業界において大きな注目を集めました。
詳しくはこちら:9.6万再生を記録!ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の世界観とマッチした限定AR企画で、放送前のプロモーションに成功!
コスメ業界での成功事例(ロレアル)
150の国・地域に進出し、35のブランドを展開している、化粧品世界最大手の仏ロレアルは、「美容テック」のリーダーを目指して3つの戦略テクノロジーに取り組んでいます。そのうちの一つが、ARを活用したバーチャルメイクです。
同社は2018年にARを展開する「ModiFace」を買収して以来、ARバーチャルメイク体験を積極的に導入・提供しています。特に人気なのはヘアカラーのシミュレーションで、ARを体験したユーザーの購買率は、そうでないユーザーに比べて10%も高いと発表しています。
また同社は米Google、米Snap.inc、米小売り最大手Walmartなどと連携し、各社のプラットフォームにARバーチャルメイクサービスを対応させているほか、2021年にはInstagramやSnapchat、Zoomなどの様々なプラットフォームに応じたオンラインメイクアップフィルター「Signature Faces」をリリースしています。
ARバーチャルメイクへの投資はコロナ禍で実を結び、2021年時点でツールの利用は5倍、購入率は3倍に増えました。同社は今後新たな販促チャネルなどを見据え、さらに発展していくとしています。
参考:日本経済新聞「ARでメークお試し 仏ロレアルの美容テック戦略」
AR広告の技術・仕組み
AR広告には「ロケーション型」のものと、「ビジョンベース型」のものがあります。それぞれ詳しく解説します。
ロケーション型
ロケーション型のARは、天気や加速度などのロケーション情報を元にARを表示させる技術を指します。以下では代表的なロケーション型AR「GPS」を紹介します。
GPS
GPSから取得した位置情報にARを紐付け、画面上に視覚情報を表示させる技術です。環境変化に強いという特徴があり、広範囲で複数のARを設置・表示したい場合や、ARのマーカー設置が難しい屋外空間での利用に向いています。
GPSの位置情報に加え、磁気センサーによる傾きの把握や、加速度センサーによる端末の向きの測定が行えるため、精密な情報表示を実現できます。
詳しくはこちら:日時・GPS制御機能(WebAR「LESSAR」)
ビジョンベース型
ビジョンベース型のARは、オブジェクトを読み込むことで起動されるAR技術です。「マーカー型」と「マーカーレス型」の2種類があり、それぞれ適した用途があります。
マーカー型
マーカー型ARは、QRコードや特定のマークなど、設定されたマーカーをデバイスで読み取ることでARコンテンツを表示させる技術です。
マーカ型ARはには以下の2つの方法があります。
・ARマーカーとしてあらかじめ設定しておいた写真や画像をスキャンしてARコンテンツを表示させる
・URLにアクセスしてブラウザ上のWebカメラを起動し、設置されたARマーカーにカメラをかざし読み取ることで、ARコンテンツを表示させる
写真やイラスト画像などのARマーカーを認識してARコンテンツが起動する仕組みのため、イラスト・写真が3Dで動き出すようなデジタル×アナログの表現を楽しんでもらう表現が得意なARです。
また、商業施設やイベント会場などで、ARマーカーが設定されたポスターを施設内のさまざまな場所に設置し、すべてのマーカーを読み込むことで特典をゲットできるという、スタンプラリー形式の回遊施策としても活用できます。
ほかにも商品パッケージをスキャンすることでくじがひけたり、教科書に書かれた図形にカメラをかざすと立体で表示させたりするなど、多様な用途で活用されています。
詳しくはこちら:マーカー型AR機能(WebAR「LESSAR」)
マーカーレス型
マーカーレス型ARとは、画像やイラストなどのマーカーが不要で、カメラが映し出した空間や物体をリアルタイムに解析し、ARコンテンツを表示させる技術のことです。マーカー設置が難しい場所でもARコンテンツを表示できます。
マーカーレス型ARには以下の2つの表示方法があります。
・URLにアクセスし直接ARコンテンツを3D表示させる
・AR用のWebカメラを起動し、空間や物体を認識させることでARコンテンツを3D表示させる
マーカーレス型ARは「空間認識型」と「物体認識型」の2種類に分類でき、「空間認識型」は家具設置シミュレーションなどの施策で、「物体認識型」はバーチャルメイクや、カメラが認識した商品をより詳しく解説する用途などで利用されています。
またGPS機能を利用して位置情報を取得し、指定のエリアにチェックインすることでARコンテンツを表示させることも可能です。
詳しくはこちら:水平面認識AR(WebAR「LESSAR」)
AR広告・ARプロモーションをもっと知ろう
本記事ではAR広告・ARプロモーションについて紹介しました。 フォーム入力後、資料を閲覧できます。
市場が急速に拡大しているECサイトと相性が良いことに加え、コロナ禍によって広く普及したオンライン化とも親和性のあるAR広告。従来主流だった紙や動画では実現できないインタラクティブ性を持ち、臨場感や迫力のある表現を実現できるため、広告手法として未知数の大きな可能性を秘めています。
Metaなどの大手企業もAR分野に膨大なリソースを投資しており、今後ARを活用した広告・プロモーションの注目度はさらに高まっていくでしょう。
WebARの活用法がわかる『LESSAR(レッサー)』概要資料